2025.06.26
派遣社員に「定年」はある?採用担当者が知るべきシニア人材活用のメリットと注意点
近年、少子高齢化に伴う労働力不足は深刻化しており、シニア人材の活用は企業にとって喫緊の課題となっています。特に、柔軟な働き方が可能な「派遣」という雇用形態において、「派遣社員に定年はあるのか?」という疑問を持つ採用担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、派遣社員の定年に関する基本的な考え方から、シニア派遣を活用するメリット、そして注意点までを網羅的に解説します。貴社の優秀なシニア人材確保の一助となれば幸いです。
※本記事の情報は2025年6月時点のものです
派遣社員に定年制度は適用される?
自社の定年制度が派遣社員にも適用されるのか、疑問に感じる採用担当者の方もいるかもしれません。結論から言うと、派遣社員に企業のような明確な定年制度は適用されないケースがほとんどです。 その理由と実態を詳しく見ていきましょう。
派遣社員に定年が設定されない理由
派遣社員の雇用契約は、派遣元企業(派遣会社)と労働者の間で結ばれるものです。そのため、派遣先企業の就業規則に定められた定年制度が直接的に適用されることはありません。多くの派遣会社では、年齢制限を設けずに登録を受け付けており、60歳以上の人材でも問題なく派遣社員として働くことが可能です。
これは、派遣法などの法律に派遣社員の定年に関する明確な規定がないことにも起因します。有期雇用派遣の場合、契約期間が終了しても、双方の合意があれば再契約によって継続して働くことができます。
参考:無期雇用派遣と有期雇用派遣の違いとは?メリット・デメリット・注意点を徹底解説
60歳以上の派遣社員が増加する背景と企業側のメリット
労働力人口が減少する中で、60歳以上のシニア派遣社員への注目度はますます高まっています。その背景と、企業がシニア派遣を活用する具体的なメリットについて解説します。
シニア派遣の需要が高まる背景
-
少子高齢化による労働力不足の深刻化: 企業の持続的な成長には多様な人材の確保が不可欠であり、経験豊富なシニア層への期待が高まっています。
-
働き方改革の推進: 定年延長や再雇用制度の普及により、60歳以降も働き続けたいという意欲を持つシニアが増加しています。柔軟な働き方が可能な派遣は、彼らにとって有力な選択肢となっています。
-
経験豊富な即戦力: 製造業やサービス業など、長年培われた専門知識やノウハウを活かせるシニア人材への需要が拡大しています。
企業がシニア派遣を活用するメリット
シニア派遣の活用は、企業に以下のような多大なメリットをもたらします。
-
即戦力としての活用: 豊富な職務経験と専門知識を持つシニア人材は、入社直後から高いパフォーマンスを発揮することが期待できます。OJTの負担も軽減され、短期間でプロジェクトを軌道に乗せることも可能です。
-
組織の活性化: 若手社員の指導や育成において、シニア社員の経験や洞察力は貴重な財産となります。世代間の知識・経験の共有は、組織全体の成長を促し、多様性を尊重する企業文化の醸成にも繋がります。
-
派遣期間制限の特例: 労働者派遣法の「3年ルール(同一の派遣社員を同一組織単位で受け入れられるのは3年まで)」は、60歳以上の派遣社員には適用されません。 これにより、企業は高度な専門性を持つシニア人材を長期的に確保し、ノウハウ継承や継続的な業務遂行が可能となります。
参考:「派遣の3年ルール」って? -
助成金の活用: 企業がシニア人材を雇用する際、高年齢者雇用安定助成金など、各種助成金を活用できる場合があります。これにより、採用コストを抑えながら優秀な人材を確保することが可能です。最新情報は厚生労働省のウェブサイトで確認してください
60歳以上の派遣社員に関する社会保険と年金
シニア派遣社員を受け入れる際、採用担当者として知っておきたいのが、社会保険や年金に関するルールです。特に、在職老齢年金制度は理解しておくべき重要なポイントです。
社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入条件
派遣社員も、一定の条件を満たせば社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入対象となります。
-
一般的な加入条件:
-
1週間の所定労働時間が20時間以上であること
-
月額賃金が8.8万円以上であること
-
2ヶ月を超える雇用の見込みがあること
-
学生ではないこと
-
従業員51人以上の企業に勤務していること(2024年10月から拡大)
-
シニア派遣社員であっても、上記の条件を満たせば社会保険への加入が必要です。
年金との調整と在職老齢年金制度
60歳以降も働きながら年金を受け取る場合、「在職老齢年金制度」により、給与と年金の合計額によっては年金の一部または全額が支給停止されることがあります。
採用担当者としては、シニア派遣社員が安心して働けるよう、この制度について事前に情報提供を行い、必要に応じて年金事務所への相談を促すなど、サポート体制を検討することをおすすめします。
シニア派遣を活用する上での注意点
多くのメリットがあるシニア派遣ですが、一方で注意すべき点も存在します。これらの点に配慮することで、シニア人材の定着と活躍を促し、貴社にとってより大きな戦力となるでしょう。
1. 体力・健康面への配慮
シニア層の雇用においては、体力や健康状態への配慮が不可欠です。
-
柔軟な働き方の提案: 長時間労働や夜勤、肉体的な負担が大きい業務は避けるなど、シニア人材の体力に合わせた業務内容や勤務時間の調整を検討しましょう。
-
定期的な健康診断の実施: 派遣元企業と連携し、定期的な健康診断の受診を推奨し、健康状態の把握に努めましょう。
-
安全な職場環境の整備: 高齢者が安心して働けるよう、転倒防止策や適切な休憩場所の確保など、職場環境の整備も重要です。
2. 職場コミュニケーションとモチベーション管理
多様な年代の社員が働く職場では、コミュニケーションの工夫が求められます。
-
相互理解の促進: シニア社員の豊富な経験や知識を尊重し、若手社員との情報共有や連携を促す機会を設けましょう。
-
適切なフィードバックと評価: シニア社員が自身の貢献を実感できるよう、定期的なフィードバックや成果に応じた適切な評価を行うことで、モチベーションの維持に繋がります。
-
新しいスキルの習得支援: 必要に応じて、新しい技術やツールの習得を支援する研修機会を提供することで、シニア社員のスキルアップを促進し、長期的な活躍を支援しましょう。
3. 働く目的と適性のマッチング
シニア人材が仕事に求めるものは、収入だけでなく、社会貢献、自己実現など多岐にわたります。
-
入念なヒアリング: 採用時には、派遣元企業と連携し、シニア人材が仕事に何を求めているのか、どのような働き方を希望しているのかを丁寧にヒアリングしましょう。
-
ミスマッチの防止: 業務内容や職場の雰囲気、期待する役割などを明確に伝え、ミスマッチによる早期離職を防ぎ、長期的な就業に繋げることが重要です。
派遣社員の定年・再雇用に関するQ&A
採用担当者からよく寄せられる、派遣社員の定年や再雇用に関する疑問点についてQ&A形式でまとめました。
Q1. 派遣社員は何歳まで働けるのでしょうか?法律上の年齢制限はありますか?
A1. 法律上、派遣社員に対する明確な年齢制限は設けられていません。派遣先企業や派遣元の契約内容によりますが、条件を満たせば65歳を超えても勤務が可能です。ただし、業務内容によっては、体力的な要件などから年齢に制約が生じるケースもあるため、応募時や契約前に必ず確認するようにしましょう。
Q2. 派遣社員にも無期転換ルールは適用されますか?また、定年退職日の定め方はどうなりますか?
A2. はい、有期雇用派遣社員であっても、同一の派遣会社との有期労働契約が通算5年を超えた場合、労働者の申し込みにより無期労働契約に転換できる「無期転換ルール」が適用されます。派遣社員に「定年退職日」という概念は原則としてありませんが、無期転換後の雇用継続については、派遣会社の就業規則や個別の労働契約によるため、事前に確認が必要です。
Q3. 60歳以上の派遣社員を受け入れた場合、社会保険の継続と年金受給は両立できますか?
A3. はい、社会保険(健康保険・厚生年金)の加入条件を満たせば、60歳以上の派遣社員も社会保険に加入できます。年金受給との両立については、「在職老齢年金制度」により、給与と年金の合計額によっては年金が減額される可能性があります。しかし、年金を部分的に受給しつつ働くことで、総合的な収入を増やすことができる場合も多いため、一概に不利とは言えません。ご本人には、年金事務所や派遣会社と事前に相談して試算を行うことをおすすめしてください。
Q4. 60歳以上の派遣社員の雇用で活用できる助成金はありますか?
A4. はい、企業が60歳以上の従業員を継続的に雇用する際に支給される高年齢者雇用安定助成金などがあります。これは、シニア人材の活用を促進するための国の制度です。助成金の内容や適用条件は随時変更される可能性があるため、厚生労働省のウェブサイトなどで最新情報を確認し、積極的に活用を検討しましょう。
まとめ:シニア派遣の活用で企業の持続的成長を
派遣社員に明確な「定年」は適用されないケースが多く、意欲とスキルがあれば年齢を問わず活躍できるのがシニア派遣の特徴です。採用担当者の皆様にとって、経験豊富なシニア人材の活用は、単なる労働力不足の解消に留まらず、組織の知識継承、活性化、そして持続的な成長を実現するための重要な戦略となります。
シニア派遣を活用する際は、体力・健康面への配慮、職場コミュニケーションの促進、そして個々の働く目的や適性とのマッチングを重視することが成功の鍵です。これらのポイントを踏まえ、貴社の事業成長に貢献する優秀なシニア人材の採用をぜひご検討ください。
シニア派遣の導入に関して、さらに詳しく知りたい点や具体的な相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。