求人票の書き方完全ガイド|必須項目・NG表現・2024年改正対応まで
2026.08.20
求人票は、採用活動における最初の接点です。どれだけ魅力的な職場環境や待遇を用意していても、求人票の内容が曖昧であったり法令上の記載漏れがあったりすれば、応募者のミスマッチが増え、採用精度は下がります。さらに、2024年4月1日に施行された職業安定法施行規則の改正により、「業務の変更の範囲」「就業場所の変更の範囲」「有期労働契約の更新上限」の3項目が新たに明示義務となりました。未対応のまま求人を出し続けることは法的リスクにもつながります。本記事では、法定必須項目から2024年改正対応、NG表現のチェックポイント、派遣求人票の固有要件、応募が増える仕事内容の書き方まで、採用担当者・HR担当者が実務で使える情報を網羅的に解説します。
求人票とは?募集要項・求人広告との違いを整理する
「求人票」「募集要項」「求人広告」は採用現場でしばしば混同されますが、それぞれ明確な役割と法的位置付けの違いがあります。求人票を単なる「応募者向けの案内文書」として捉えていると、法令上の明示義務を見落とすリスクがあります。まず、これら3つの用語の定義と使い分けを整理したうえで、求人票が持つ法的な意味合いを確認しましょう。
法律上の「求人票」の位置付け
職業安定法第5条の3は、求人者(企業・事業主)が労働者を募集する際、または職業紹介を依頼する際に、労働条件を明示しなければならないと定めています。この明示義務を果たすための書面が「求人票」に相当します。
重要なのは、求人票が単なる広告物ではなく、法的根拠に基づく「労働条件の明示書面」として位置付けられているという点です。職業安定法第65条では、求人に際して虚偽の条件を提示したり誇大な内容を記載したりした場合に罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)が適用されると規定されています。つまり、「少し大げさに書いても問題ないだろう」という認識は、法的リスクを生む可能性があります。
また、求人票に記載した労働条件は、実際の労働契約締結時の内容と大きく乖離してはなりません。採用後に「求人票と話が違う」というトラブルが生じた場合、求人票の記載内容が重要な判断材料となります。法的文書としての性質を常に意識したうえで作成することが重要です。
求人票・募集要項・求人広告の使い分け
3つの用語は下記のように整理できます。
【求人票】職業安定法に基づく労働条件の明示書面。ハローワークや人材紹介会社に提出する際に使用する正式な書面で、法定の必須項目を網羅する必要があります。法的効力を持つ文書として位置付けられます。
【募集要項】採用条件を社内外に伝えるためのまとめ文書。法定の厳密な様式にとらわれず、自社の採用フローや必要スキルを整理したものです。社内での採用基準共有や、候補者との面談前の条件確認に用いられることが多く、求人票に比べて自由度が高いです。
【求人広告】求人媒体(転職サイト・求人誌など)に掲載するマーケティング訴求を兼ねた文書。応募を促すためのコピーや企業の魅力訴求が中心になります。一方で、虚偽・誇大な記載は職業安定法の規制対象となるため、法令遵守の観点は求人票と同様に求められます。
採用実務では、これら3つを相互に補完しながら使う形が一般的です。求人票で法的明示義務を果たしつつ、求人広告で応募者への訴求力を高め、募集要項で社内の採用軸を共有する、という役割分担が有効です。
求人票の必須項目一覧(法定13項目+2024年改正追加3項目)
求人票には、職業安定法施行規則が定める必須記載事項があります。2024年4月1日の改正施行以前から義務付けられていた13項目に加え、改正により3項目が新たに追加されました。採用担当者はこれら全16項目をもれなく記載することが法令上求められています。各項目の記載方法を正確に把握しておきましょう。
従来からの法定13項目
職業安定法施行規則第4条の2に基づき、求人者が明示しなければならない従来からの13項目は以下のとおりです。
①業務内容:具体的な職務内容を記載します。「その他付随する業務」等の曖昧な表現だけでは不十分です。
②契約期間:雇用形態(正社員・契約社員・パート等)と、有期の場合は契約期間を明記します。
③試用期間:試用期間の有無・期間・その間の労働条件(賃金が異なる場合はその旨)を記載します。
④就業場所:勤務先の住所を具体的に記載します。複数拠点がある場合は主要な就業場所を明示します。
⑤就業時間:始業・終業時刻、休憩時間、変形労働時間制やシフト制の場合はその旨を記載します。
⑥休日・休暇:週休日、年次有給休暇の付与基準、特別休暇の有無などを記載します。
⑦賃金:基本給・各種手当の金額または計算方法、固定残業代が含まれる場合はその内訳と時間数を記載します。
⑧賃金の締日・支払日:給与の締め日と支払日を明記します。
⑨加入保険:健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険の加入状況を記載します。
⑩募集者の氏名または名称:会社名・事業者名を正式名称で記載します。
⑪派遣労働者として雇用する場合はその旨:派遣雇用の場合は明示が必要です。
⑫受動喫煙防止措置の状況:職場における受動喫煙防止措置(禁煙・分煙・対策なし等)を記載します。
⑬裁量労働制を採用している場合はその旨:専門業務型・企画業務型裁量労働制の適用がある場合は記載が必要です。
2024年4月改正で追加された3項目の具体的な書き方
厚生労働省の指針に基づき、2024年4月1日施行の職業安定法施行規則改正(令和6年改正)では、以下の3項目が求人票等における明示義務事項として追加されました。改正の背景には、労働者が求職活動・就職時に将来のキャリアを適切に見通せるようにするという政策意図があります。
【追加1】従事すべき業務の変更の範囲
入社後に配置転換等により変更となる可能性のある業務の範囲を明示します。「変更の範囲」とは、雇用期間中に命じる可能性のある業務の上限範囲を指します。
記載例①(変更あり):「業務の変更の範囲:会社の定める業務全般(営業・事務・企画等)」
記載例②(変更なし):「業務の変更の範囲:変更なし(入社時の業務のみ)」
変更の可能性がある場合は実態に即した範囲を記載し、「変更なし」と明示できる場合はその旨を記載します。「必要に応じて変更の可能性あり」といった抽象的な記載は、労働者が実態を把握できないため不十分とされるケースがあります。
【追加2】就業場所の変更の範囲
転勤・テレワーク導入等により変更となり得る就業場所の範囲を明示します。
記載例①(転勤あり):「就業場所の変更の範囲:会社の定める事業所(東京・大阪・名古屋)」
記載例②(転勤なし):「就業場所の変更の範囲:変更なし(入社時の就業場所のみ)」
記載例③(テレワーク含む):「就業場所の変更の範囲:会社の定める事業所またはテレワーク勤務場所」
【追加3】有期労働契約を更新する場合の基準
有期雇用(契約社員・パートタイム等)の場合、契約更新の有無・更新基準・更新上限(上限回数または通算契約期間の上限)を明示します。
記載例①(更新上限あり):「契約更新:あり(業務量・勤務態度・会社の経営状況に基づき判断。上限:通算3年・最大2回更新)」
記載例②(更新上限なし):「契約更新:あり(更新上限なし。業務量・本人の能力・会社の経営状況に基づき判断)」
記載例③(更新なし):「契約更新:なし(プロジェクト完了をもって契約終了)」
更新上限を設ける場合は、「上限回数」または「通算契約期間の上限」のいずれか(または両方)を明記することが厚生労働省の指針で求められています。
記載が任意だが書いておくべき推奨項目
法定必須項目に加え、以下の推奨項目を記載することで求人票の質が高まり、応募率の向上や採用精度の改善につながります。
【福利厚生・諸制度】住宅手当・通勤手当・家族手当・育児休業・介護休業・資格取得支援制度等。法定外の制度が充実しているほど求人票の訴求力が上がります。
【研修・教育制度】入社時研修・OJT体制・資格取得支援・外部研修費用負担の有無など、入社後の成長環境を具体的に示すことで、キャリア意識の高い応募者に響きます。
【職場環境・雰囲気】チーム構成(人数・年齢層)、平均残業時間、リモートワーク制度の実態など。応募者が「自分がここで働くイメージ」を持てる情報を補足します。
【採用フロー】書類選考→一次面接→最終面接という選考ステップと、各フローの所要日数の目安を明示すると、応募者の心理的ハードルが下がります。
これらの情報が不足していると「求人票が薄い」という印象を与え、比較検討の段階で他社に流れるリスクがあります。法定項目の記載を最低ラインとしつつ、推奨項目も積極的に盛り込む姿勢が採用競争力につながります。
書いてはいけないNG表現と禁止事項
求人票には、職業安定法だけでなく労働基準法・男女雇用機会均等法・雇用対策法(現・労働施策総合推進法)など複数の法令が適用されます。「知らなかった」では済まされないNG表現が実務の現場では散見されます。法令違反のリスクを回避するために、典型的なNG表現のパターンを把握しておきましょう。
差別・偏見につながる表現(性別・年齢・国籍)
男女雇用機会均等法第5条は、募集・採用における性別を理由とした差別的取扱いを禁止しています。また、労働施策総合推進法(旧・雇用対策法)は、年齢を理由とした採用拒否の禁止を原則として定めています。これらに抵触する典型的なNG表現を確認します。
【性別に関するNG表現】
・「明るい女性スタッフ募集」→性別を指定する表現は禁止。「明るい方を歓迎します」と書き換えます。
・「男性活躍中」→実態の紹介として記載する場合も、性別による優遇と受け取られかねない表現は避けます。
・「受付・事務(女性向け)」→業務に性別を結びつける記載は均等法違反になり得ます。
ただし、芸術・芸能分野での性別による役柄の必要性、宗教的・風俗的慣習上の必要性、プライバシー保護の観点から合理的理由がある場合など、均等法が認める例外事由に該当する場合は記載が認められることがあります。自社の募集が例外に当たるかどうかは、厚生労働省の指針を参照するか、労働局に確認することをお勧めします。
【年齢に関するNG表現】
・「20代歓迎」「35歳以下」→年齢上限の設定は原則禁止。法的例外(定年年齢未満での定年後再雇用・特定職種の技能習得期間の観点等)に該当しない限り記載できません。
・「若い職場」「若手中心のチーム」→間接的に年齢を制限するような表現も問題になり得ます。
【国籍・民族に関するNG表現】
・「日本国籍のみ」→就労資格の確認は必要ですが、国籍のみを条件とすることは不当な差別に当たります。「日本での就労資格を有する方」と書き換えます。
誇大・虚偽記載と固定残業代の不適切表示
職業安定法第65条は、虚偽の条件を呈示して職業紹介・労働者の募集・採用を行うことを禁じています。以下のような表現は誇大・虚偽記載として問題になり得ます。
【誇大表現のNG例】
・「月収30万円以上可」→「以上可」という表現は、実態として大多数が30万円未満であれば誇大記載に当たります。「月収例:28万円(入社2年目・Aさんの場合)」のように根拠のある実例で示すことが推奨されます。
・「完全週休2日制」→実態として特定期間に休日出勤が発生する場合は「完全」という表現は不正確です。「週休2日制(繁忙期は変動する場合あり)」と正確に記載します。
・「アットホームな職場」「残業ほぼなし」→主観的・抽象的な表現で実態と乖離するケースが多く、入社後のミスマッチを招きます。「平均残業時間:月10時間(前年度実績)」のように数値で示すことが望まれます。
【固定残業代(みなし残業代)の不適切表示】
固定残業代を含む給与を求人票に記載する際は、固定残業代に相当する金額・時間数・超過時の追加支払いの旨を明示しなければなりません。これは職業安定法施行規則の明示義務に基づくものです。
NG例:「月給25万円(各種手当含む)」→固定残業代の内訳が不明。
OK例:「月給25万円(基本給21万円+固定残業代4万円/45時間分含む。45時間を超えた場合は超過分を追加支給)」
応募条件に関するNG表現
応募資格・条件の書き方にも注意が必要です。必須条件と歓迎条件を混同させる表現、または実態よりも厳しく見える条件の記載は、応募者を不当に絞り込んでしまい、機会損失につながります。
【条件を必須のように見せるNG例】
・「長期勤務できる方(3年以上)」→勤続年数の条件を応募資格として記載することは、実態を伴わない場合に問題となり得ます。また、短期離職者を一律に排除する意図があれば公平性の観点からも検討が必要です。
・「転勤可能な方」→転勤の可能性が低い場合や、入社後に個別に相談できる場合は、必須条件として記載することで応募者を過度に絞り込んでしまいます。
【資格・免許に関するNG例】
・「普通自動車免許必須(MT限定不可)」→業務上ATで十分であるにもかかわらずMT免許を必須とする記載は不合理です。「普通自動車免許(AT限定可)」と実態に即した表記にします。
必須条件と歓迎条件は明確に分けて記載し、「必須:〇〇」「歓迎(あれば尚可):〇〇」のように区分することで、応募者が正確に自己評価できるようになります。
【派遣求人票】派遣会社が知っておくべき固有の記載要件
派遣求人票は、直接雇用の求人票とは異なる法的根拠と記載要件があります。派遣元事業主(派遣会社)は、労働者派遣法に基づく明示義務を果たしつつ、2024年改正で追加された項目にも対応しなければなりません。派遣採用に携わる企業担当者・派遣会社のスタッフが理解しておくべきポイントを整理します。
派遣法が定める労働条件明示の義務
労働者派遣法第34条は、派遣元事業主が派遣労働者との間で労働者派遣に係る労働契約を締結するにあたり、就業条件を書面で明示することを義務付けています。この就業条件明示書に記載すべき主な事項は以下のとおりです。
・派遣先の事業主の名称および所在地
・就業場所(派遣先の事業所の所在地・組織名)
・業務内容(従事する業務の内容)
・派遣期間(派遣の開始日・終了日)
・就業する日(勤務日・シフトパターン等)
・就業する時間(始業・終業時刻)
・賃金の額・計算方法・締日・支払日
・安全衛生に関する事項(安全管理体制等)
・苦情の申出先(派遣元・派遣先それぞれの担当窓口)
派遣求人票を作成する段階では、派遣先が確定していない場合もあります。その場合は確定している情報の範囲内で記載し、決定後に改めて明示することが必要です。「派遣先確定後に詳細を明示する」旨を求人票に記載しておくことも実務上有効です。
「変更の範囲」と派遣先情報をどう記載するか
2024年4月改正で追加された「業務の変更の範囲」「就業場所の変更の範囲」は、派遣求人票においても適用されます。ただし、派遣雇用では「派遣先による」という状況が生じやすく、直接雇用の場合と異なる書き方の工夫が必要です。
【業務の変更の範囲(派遣の場合)】
派遣先が確定している場合:「業務の変更の範囲:派遣先の定める業務(事務全般)」のように、派遣先で命じられ得る業務の範囲を記載します。
派遣先が未確定の場合:「業務の変更の範囲:派遣先事業主の定める業務(派遣契約に定める範囲内)」と記載し、派遣先確定後に書面で改めて明示する運用が求められます。
【就業場所の変更の範囲(派遣の場合)】
「就業場所の変更の範囲:派遣先事業主が指示する就業場所(派遣契約に基づく)」のように記載します。派遣先が複数の事業所を持つ場合、変更が想定される事業所の範囲を具体的に明示することが望ましいです。
注意点として、「派遣先による」のみの記載では、厚生労働省の指針が求める「変更の範囲を具体的に明示する」という要件を満たさないとされる可能性があります。可能な限り範囲を特定するか、少なくとも「派遣契約に定める範囲内」という形で限定性を持たせた表現にすることが推奨されます。
人材紹介会社が「良い求人票」と判断する基準
派遣会社や人材紹介会社が企業から求人票を受け取った際、「この求人票はマッチング精度が上がる」と判断するのはどのような内容のものでしょうか。人材会社の視点から、求人票の質を高めるポイントを整理します。
【業務範囲が具体的である】「営業補助全般」ではなく「受注処理(社内システム入力)・顧客対応(電話・メール)・資料作成(Excel・PowerPoint)」のように、実際に行う業務を箇条書きで具体化していると、候補者の適性判断がしやすくなります。
【NG条件・配慮事項が明記されている】「電話対応NGの方は難しい」「未経験でも可・ただし事務経験1年以上を歓迎」のように、受け入れられない条件やあると望ましいスキルが明確だと、紹介の精度が上がります。
【職場環境の実態情報がある】チームの規模・年齢構成・平均残業時間・リモートワークの実態など、候補者が意思決定に必要とする情報が含まれている求人票は、面談前辞退率が低下する傾向があります。
【採用決定のスピードが見える】「書類通過後、1週間以内に面接設定」「内定から入社まで最短2週間対応可」などの情報があると、求職者の他社選考との兼ね合いを考慮した紹介タイミングの最適化が図れます。
求人票は「企業が書きたいこと」ではなく「候補者が知りたいこと」「紹介会社がマッチングに必要な情報」を基準に作成することが、採用効率の向上につながります。
応募数・採用コストにお悩みの企業様へ
応募が増える「仕事内容」の書き方
求人票の中で応募者が最も注目するのが「仕事内容」欄です。しかし、多くの求人票が「電話対応・データ入力・来客対応・その他付随業務」といった業務の羅列にとどまっており、応募者が「入社後の自分をイメージする」きっかけを提供できていません。仕事内容欄を「業務リスト」から「入社後のイメージを届ける場」へと転換することが、応募率向上の第一歩です。
役割・期待・一日の流れで構成する
仕事内容欄を効果的に書くフレームワークとして、「役割→期待→一日の流れ」の3要素構成を活用することをお勧めします。
【役割】このポジションが何のために存在するかを一言で示します。応募者が「自分がここに必要とされている理由」を理解できる入口になります。
例:「営業チームの’縁の下の力持ち’として、顧客対応と社内調整を一手に担うポジションです。」
【期待】入社後に求められる成果・行動をできる限り具体的に示します。スキルの有無ではなく、「どう動いてほしいか」を伝えることがポイントです。
例:「ご入社後3か月でチームの受注業務を独立して担当いただくことを期待しています。先輩スタッフによるOJTで丁寧にサポートします。」
【一日の流れ】出社から退社まで、実際の業務の流れをタイムライン形式で示します。具体的な時刻と業務を組み合わせることで、求職者は日常の働き方を具体的にイメージできます。
例(事務職の場合):
9:00 出社・メール確認・当日のタスク整理
10:00 受注データの入力・社内システムへの登録
12:00 昼休憩
13:00 顧客からの問い合わせ対応(電話・メール)
15:00 営業スタッフとの情報共有ミーティング(週2回)
17:00 翌日の準備・業務終了
この3要素を盛り込むことで、業務の羅列型求人票に比べて応募者の「ここで働きたい」という意欲を引き出しやすくなります。
将来の業務範囲(変更の範囲)をポジティブに伝える
2024年改正で必須となった「業務の変更の範囲」の記載は、ともすれば応募者に「将来何をさせられるかわからない」というネガティブな印象を与えかねません。しかし、書き方を工夫することで、キャリアパスの広がりとして訴求することが可能です。
【ネガティブな印象を与える書き方】
「業務の変更の範囲:会社の定める業務全般(営業・事務・企画・その他)」
→変更の可能性を義務的に記載するだけで、応募者にとって「何をやらされるかわからない」と映ることがあります。
【キャリアパスとして伝えるポジティブな書き方】
「入社後はまず受注・顧客対応業務をメインにご担当いただきます。ご本人の希望と適性に応じて、将来的にはチームリーダーや営業企画への異動もお任せできる環境です。(業務の変更の範囲:営業・事務・企画業務)」
「変更の範囲」を記載しつつ、「その変更がキャリアの可能性の広がりである」という文脈で提示することで、法令を遵守しながら応募者の意欲を引き出す表現になります。「将来的に○○業務もお任せします」「○○へのキャリアアップが可能です」といった言い回しをうまく活用しましょう。
給与・待遇欄の正しい書き方と注意点
給与欄は求人票の中で最もリーガルリスクが高い項目のひとつです。固定残業代の不適切な開示・賞与の誇大表示・有期雇用の更新条件の不明瞭な記載は、いずれも法令上の問題を引き起こす可能性があります。2024年改正で義務化された更新上限の明示も含め、正確な書き方を確認しておきましょう。
固定残業代・みなし残業の開示ルール
固定残業代(みなし残業代)を含む給与体系を採用している場合、求人票への記載方法は厳格に定められています。厚生労働省の指針に基づき、以下の3点を明示することが求められます。
①固定残業代の金額(月額)
②固定残業代に相当する時間数(何時間分か)
③固定残業代の時間数を超過した場合は追加で残業代を支払う旨
NG記載例:
「月給25万円(諸手当含む)」→固定残業代の存在・金額・時間数が不明。職業安定法違反となり得ます。
OK記載例:
「月給250,000円
内訳:基本給210,000円+固定残業代40,000円(月45時間分)
※固定残業時間を超えた場合は超過分を別途支給します。」
なお、固定残業代に含める時間数は、労働基準法の時間外労働の上限(月45時間・年360時間)との整合性にも注意が必要です。上限を超える固定残業代の設定は、三六協定との関係でも確認が必要です。
また、みなし労働時間制(事業場外みなし・裁量労働制)を採用している場合は、その旨を求人票に記載する義務があります。記載漏れは法定13項目の一つである「裁量労働制の採用有無」の明示義務違反にもなり得ます。
賞与・昇給の表記と有期雇用の更新上限明示
賞与・昇給の記載については、将来の支給を約束するような表現を避け、過去実績に基づく「見込み額」であることを明示することが重要です。
NG例:「賞与:年2回・計4か月分」→確定的に支払われるかのように見える表現は、実態と乖離した場合に問題となります。
OK例:「賞与:年2回(支給実績あり。前年度実績:合計3.8か月分。業績により変動する場合があります)」
昇給についても同様に、「昇給あり(前年度実績:年1回・平均3,000円)」のように根拠のある記載が望まれます。
【有期雇用の更新上限明示(2024年改正対応)】
2024年4月改正により、有期労働契約の更新上限(更新回数の上限・通算契約期間の上限)の有無が明示義務事項となりました。これは、労働契約法の無期転換ルール(通算5年を超えた場合に無期転換申込権が発生)との関係で重要な項目です。
記載例①(更新上限あり・回数指定):
「契約期間:6か月(更新あり)
更新上限:通算2年・最大3回更新
更新の判断基準:業務量・勤務態度・会社の経営状況」
記載例②(更新上限あり・期間指定):
「契約期間:1年(更新あり)
更新上限:通算5年(無期転換申込権発生前)
更新の判断基準:業務量・能力・会社の経営状況に基づき判断」
記載例③(更新上限なし):
「契約期間:3か月(更新あり・上限なし)
更新の判断基準:本人の希望・業務量・会社の状況に基づき判断」
更新上限を途中で新設・変更した場合は、既存の労働者に対して速やかに書面で通知する義務も生じます(厚生労働省の指針)。有期雇用のスタッフが多い企業は、全員分の雇用契約書・求人票の整備を改めて確認することをお勧めします。
求人票テンプレートと記入例(雇用形態別)
ここでは、雇用形態別に実際の求人票作成に使えるテンプレートと記入例を示します。正社員・契約社員・派遣の各形態について、2024年改正で追加された3項目を含む全必須項目を網羅した記入例を参考にしてください。なお、以下の記入例はイメージ用のダミーデータを使用しています。実際の求人票は自社の実態に合わせて正確に作成してください。
正社員・契約社員の記入例
【正社員・営業事務職の記入例】
■求人事業所名:株式会社〇〇(東京都港区〇〇1-2-3)
■雇用形態:正社員
■業務内容:営業チームの受注処理・顧客対応(電話・メール)・見積書作成・請求書発行・データ入力
■業務の変更の範囲:会社の定める業務全般(事務・企画・管理業務等)
■就業場所:東京都港区〇〇1-2-3 本社
■就業場所の変更の範囲:会社の定める事業所(東京・大阪)またはテレワーク勤務場所
■就業時間:9:00〜18:00(休憩60分)
■休日:週休2日制(土日)・祝日・年次有給休暇(入社6か月後に10日付与)
■賃金:月給220,000円〜280,000円(経験・スキルにより決定)
固定残業代:30,000円(月20時間分含む。超過分は別途支給)
■賃金締日・支払日:月末締め・翌月25日払い
■昇給:年1回(前年度実績:平均3,000円)
■賞与:年2回(前年度実績:合計3.5か月分。業績により変動)
■試用期間:3か月(労働条件は本採用と同一)
■社会保険:健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険 全て加入
■受動喫煙防止措置:屋内全面禁煙
【契約社員の記入例(追加項目)】
■契約期間:1年(更新あり)
■更新上限:通算3年・最大2回更新
■更新の判断基準:業務量・勤務態度・会社の経営状況に基づき判断
派遣求人票の記入例
派遣求人票には、直接雇用の求人票に加えて、派遣固有の記載項目が必要です。
【派遣スタッフ(一般事務)の記入例】
■派遣元事業主名:株式会社〇〇(東京都〇〇区〇〇2-3-4)
労働者派遣事業許可番号:派〇〇-〇〇〇〇〇〇
■雇用形態:派遣労働者として雇用(有期雇用)
■業務内容:一般事務(データ入力・ファイリング・電話対応)
■業務の変更の範囲:派遣先事業主が指示する業務(派遣契約に定める範囲内)
■就業場所:派遣先企業の事業所(東京都内・詳細は就業条件明示書にて通知)
■就業場所の変更の範囲:派遣先事業主が指示する就業場所(派遣契約に基づく)
■派遣期間:〇年〇月〇日〜〇年〇月〇日(最長3年)
■就業時間:9:00〜17:30(休憩60分)
■賃金:時給1,300円〜1,500円(経験・スキルにより決定)
■賃金締日・支払日:〇日締め・〇日払い
■契約期間:3か月(更新あり。更新上限:最長3年)
■更新の判断基準:派遣先の業務量・勤務状況・派遣元の経営状況に基づき判断
■社会保険:健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険(条件を満たす場合)
■受動喫煙防止措置:派遣先の定める措置に準じる(詳細は就業条件明示書に記載)
■苦情の申出先:派遣元(〇〇担当)TEL:〇〇〇-〇〇〇〇・派遣先担当者(詳細は明示書に記載)
ハローワーク提出用求人票との対応関係
ハローワーク(公共職業安定所)に求人を出す場合、厚生労働省所定の求人票様式に記載します。「ハローワーク求人票」の各記載欄と、本記事で解説した必須項目は以下のように対応しています。
■「業務の内容」欄→本記事H2-2「業務内容」「業務の変更の範囲」に対応。2024年改正以降、ハローワーク求人票にも「業務の変更の範囲」「就業場所の変更の範囲」「有期雇用の更新上限」を記載する欄が追加されています。
■「雇用期間」欄→有期・無期の区分と契約期間、更新の有無・更新上限を記載します。
■「就業場所」欄→事業所の住所と、変更の範囲(転勤・テレワーク等)を合わせて記載します。
■「賃金」欄→基本給・固定残業代・各種手当の内訳を記載します。固定残業代は金額と時間数の両方が必要です。
■「加入保険等」欄→健康・厚生年金・雇用・労災の各保険の加入有無を記載します。
■「受動喫煙防止措置の状況」欄→2020年4月施行の改正健康増進法に対応した受動喫煙防止措置の内容を記載します。
ハローワークインターネットサービスのオンライン求人申込みシステムでは、これらの項目を画面上で入力する形式になっています。2024年改正対応の新様式では「変更の範囲」「更新上限」の入力欄が設けられていますので、入力漏れがないか確認してください。ハローワーク求人票の詳細な記載方法については、各地域のハローワークまたは厚生労働省のハローワークインターネットサービスの案内ページも参照してください。
まとめ
本記事で解説した要点を以下にまとめます。
・求人票は職業安定法に基づく「法的文書」であり、虚偽・誇大記載は罰則対象となります。単なる広告物として扱わず、法令遵守を前提に作成することが大前提です。
・2024年4月改正により「業務の変更の範囲」「就業場所の変更の範囲」「有期労働契約の更新上限」の3項目が明示義務として追加されました。未対応の求人票は早急な見直しが必要です。
・固定残業代は金額・時間数・超過時の追加支給の3点をセットで記載すること、賞与・昇給は過去実績に基づく「見込み」として記載することが、法的リスク回避と応募者との信頼関係構築につながります。
・仕事内容欄は「役割・期待・一日の流れ」の3要素で構成することで、応募者がイメージしやすい求人票になります。「業務の変更の範囲」の記載もキャリアパスとして前向きに表現することで、法令対応と訴求力向上を両立できます。
求人票の質は採用精度・紹介精度に直結します。法令を正確に遵守しながら、応募者にとって魅力的かつ誠実な情報を届ける求人票を作成することが、採用成功への近道です。求人票の整備や採用活動全般でお困りの点があれば、ぜひジョブリンクまでご相談ください。
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