2025.04.03
求人の年齢制限は原則禁止!法律の理由、例外、若手採用の秘訣を解説
「求人を探していると、年齢制限を見かけなくなったな…」 「うちの会社、本当は若手が欲しいんだけど、募集要項に年齢って書いちゃダメなの?」
求人募集における年齢制限について、このような疑問をお持ちではありませんか?
結論から言うと、求人・採用時に年齢制限を設けることは、法律(改正雇用対策法)によって原則として禁止されています。
この記事では、
- なぜ求人の年齢制限が禁止されたのか(法律と背景)
- どのような場合に年齢制限が例外的に認められるのか
- 年齢を書かずに「若手を採用したい」企業はどうすれば良いのか
といった点を、分かりやすく解説します。企業の採用担当者の方も、求職者の方も、ぜひ参考にしてください。適切なルールを理解し、より良い採用・就職活動に繋げましょう。
求人募集における年齢制限は原則禁止
かつては多くの求人で見られた「〇〇歳まで」といった年齢制限。しかし現在、このような表記は原則として認められていません。
なぜ禁止? 改正雇用対策法とその背景
年齢制限が禁止される直接的なきっかけは、平成19年(2007年)に施行された改正雇用対策法です。この法律により、事業主は労働者の募集・採用において、年齢に関わりなく均等な機会を与えなければならないと義務付けられました。 (参考:厚生労働省|募集・採用における年齢制限禁止について)
この法改正の背景には、以下のような社会的な状況があります。
- 少子高齢化の進行: 労働力人口が減少する中で、年齢で区切るのではなく、意欲と能力のある多様な人材を活用する必要性が高まりました。
- 働く意欲のある人の機会損失防止: 年齢だけを理由に応募できない、という状況は、個人の就労機会を奪うだけでなく、企業にとっても優秀な人材獲得の機会損失につながります。
- 公平性の確保: 年齢ではなく、個人の能力や適性で判断されるべき、という考え方が社会的に浸透してきました。
年齢制限を設けないことのメリット
年齢制限を撤廃することは、求職者だけでなく、企業にとってもメリットがあります。
- 【求職者】公平な応募機会: 年齢を気にせず、自身の経験やスキルで勝負できる環境が整います。
- 【企業】多様な人材の確保: これまでアプローチできなかった層からの応募が増え、経験豊富なベテランや、異なる視点を持つ人材など、多様な人材を獲得できる可能性が広がります。
- 【企業】潜在能力の発掘: 年齢というフィルターを外すことで、「こんな経験を持つ人がいたのか」「この発想はなかった」といった、思わぬ能力やポテンシャルを持つ人材に出会えるかもしれません。
- 【企業】企業イメージの向上: 法令を遵守し、公平な採用活動を行う企業として、社会的な信頼やイメージアップにつながります。「人を大切にする会社」という印象を与えやすくなります。
要注意!求人で使ってはいけない年齢制限の表現例
では、具体的にどのような表現がNGとなるのでしょうか?意図していなくても、書き方によっては法令違反とみなされる可能性があるため注意が必要です。
直接的な年齢指定(原則NG)
求人票に具体的な年齢を記載することは、例外事由に該当しない限り認められません。
- 「35歳以下の方」
- 「20代限定」
- 「採用は40歳まで」
間接的に年齢を示唆する表現(NGとなる可能性が高い)
直接的な年齢を書かなくても、実質的に特定の年齢層をターゲットにしていると解釈される表現も避けるべきです。
- 「若手スタッフ活躍中!若い方を募集します」
- 「今回は若年層を募集」
- 「若い感覚をお持ちの方歓迎」
- 「新卒レベルのフレッシュな人材を求む」(※「新卒者」や「卒業後〇年以内」を対象とする場合は別途条件があります。例外事由3号イに該当するか確認が必要です。)
「若い方歓迎」といった表現も、具体的な理由なく使われている場合、年齢差別と判断され、指導の対象となる可能性があります。
違反した場合のリスク
年齢制限禁止の規定に違反し、是正指導に従わない場合などには、以下のようなリスクが考えられます。
- ハローワーク等による指導・助言: 求人票の不受理や内容の是正を求められることがあります。
- 厚生労働大臣による勧告: 指導に従わない場合などに行われます。
- 企業名の公表: 勧告にも従わない悪質なケースでは、企業名が公表される可能性があります。これは企業の社会的信用に大きなダメージを与えます。
- 企業イメージの低下: 「法律を守らない企業」「差別的な企業」というネガティブなイメージが広がり、採用活動だけでなく、事業全体に悪影響を及ぼす恐れがあります。
- 訴訟リスク: 年齢を理由に応募を拒否されたと感じた応募者から、損害賠償などを求めて訴訟を起こされる可能性もゼロではありません。
例外的に年齢制限が認められる6つのケース
原則禁止の年齢制限ですが、合理的・客観的な理由がある場合には、例外的に年齢制限を設けることが認められています。ただし、例外事由に該当する場合でも、求人票にはその理由を具体的に明記する必要があります。
主な例外事由は以下の6つです。(厚生労働省の分類による)
例外事由 | 内容例 | 具体的な理由の記載例 (求人票) |
---|---|---|
1. 定年年齢を上限とする | 定年が60歳の会社が「60歳未満の方を募集」する場合(期間の定めのない労働契約) | 「定年年齢を上限とする募集(定年60歳)」 |
2. 法律で年齢制限が設けられている | 労働基準法等で禁止されている危険有害業務(満18歳未満禁止)や、警備業法(満18歳未満禁止)など | 「労働基準法第62条により18歳未満の深夜業が禁止されているため」「警備業法第14条により18歳未満禁止のため」 |
3. 長期キャリア形成を図るための若年者募集 | 新卒者など、特定の職種で長期的な育成を前提に「35歳未満の方を募集」する場合(経験不問、無期雇用が前提) | 「長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、〇歳未満の方を募集(職務経験不問)」 |
4. 技能・ノウハウ継承のための特定年齢層募集 | 特定の技能を持つ従業員が少なく、後継者育成のために「30歳~45歳の方を募集」する場合(特定の職種・年齢層) | 「技能・ノウハウの継承の観点から、特定の職種において〇歳~〇歳の方を募集」 |
5. 芸術・芸能分野での表現の真実性等のため | 子役、特定の年齢設定がある役柄の俳優・モデルなどを募集する場合 | 「芸術・芸能の分野における表現の真実性等の要請から、〇歳の方を募集(〇〇役のため)」 |
6. 特定の人の雇用促進(高齢者、就職氷河期世代など) | 国の施策に基づき「60歳以上の方を募集」、または「就職氷河期世代(例:35歳~54歳)の方を募集」する場合 | 「高年齢者の雇用を促進するため、60歳以上の方を募集」「就職氷河期世代の方向けの募集(〇歳~〇歳)」 |
【重要】例外事由を適用する際の共通の注意点
- 理由の明記は必須: なぜその年齢制限が必要なのか、上記表の例のように具体的な理由を求人票に必ず記載しましょう。
- 客観性・合理性: その年齢制限が必要である客観的・合理的な理由がなければなりません。「なんとなく若い方が良いから」「体力がありそうだから」といった曖昧な理由は認められません。特に「3号イ(キャリア形成)」「3号ロ(技能継承)」は、その必要性を具体的に説明できるように準備しておくことが望ましいです。
安易に例外事由を適用するのではなく、本当に必要かどうかを慎重に検討することが重要です。不明な点や判断に迷う場合は、ハローワークや社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
年齢制限なしで「若手を採用したい」企業ができること
法律で年齢を制限できないけれど、組織活性化や将来の幹部候補育成のために、できれば若手人材を採用したい…と考える企業もあるでしょう。その場合、直接的な年齢制限ではなく、別の方法で若手にアピールする工夫が必要です。
1. 求人情報の書き方を工夫する
誰に向けた求人なのか、どんな人に来てほしいのかが伝わるように、表現を工夫します。
- ターゲット(若手)に響くキーワード:
- 「未経験者歓迎」「第二新卒歓迎」(経験が浅くても応募しやすい)
- 「ポテンシャル採用」「人物重視」(現在のスキルだけでなく将来性に期待)
- 「充実した研修制度あり」「OJTでしっかりサポート」(教育体制の安心感)
- 「資格取得支援制度あり」「キャリアアップ支援」(成長意欲を刺激)
- 具体的な情報の明示:
- 入社後の具体的な仕事内容や1日の流れ(働くイメージが湧きやすい)
- どのようなスキルが身につくのか(自己成長への期待感)
- キャリアパスのモデルケース(例:入社3年でリーダー、5年でマネージャーなど)(将来像を描きやすい)
- 職場の魅力:
- 実際に若手社員が活躍している様子が分かる写真やインタビュー動画(共感や親近感)
- 社風や職場の雰囲気(例:「部署間の垣根がなく、気軽に相談できるフラットな組織です」「服装自由」など具体的に)(自分に合うか判断しやすい)
2. 勤務条件や制度を魅力的にする
若手層が企業選びで重視する傾向にある「働きがい」や「働きやすさ」、「成長機会」を具体的に示します。
- 成長できる環境:
- 具体的な研修プログラムの内容(オンライン、外部研修など)
- メンター制度や1on1ミーティングの実施状況
- 目標設定や評価制度の透明性(頑張りが評価される実感)
- 働きやすさ:
- 柔軟な働き方(リモートワーク、フレックスタイム制度の導入状況、コアタイムなど)
- 年間休日数(例:125日以上)、有給休暇取得率の実績値
- 残業時間の平均(例:月平均〇時間)
- 福利厚生(住宅手当、社員食堂、レクリエーション、自己啓発支援など、具体的な内容)
- キャリア支援:
- ジョブローテーション制度による多様な経験の機会
- 社内公募制度によるキャリアチェンジの可能性
3. 若年層が見ている媒体でアピールする
ターゲットとなる若手層が、普段どのような媒体で情報収集しているかを意識し、適切なチャネルで情報を届けます。
- Web媒体:
- 若手向けの求人サイトや、特定の職種に特化したサイト
- 企業の採用サイト(デザイン性、スマホ対応、情報量を充実させる)
- SNS: Instagram, X (旧Twitter), TikTok, YouTubeなどで、社員の日常、社内イベント、働く環境などをカジュアルに発信
- ダイレクトリクルーティングサービス: データベースから直接候補者にアプローチ
- 社員紹介(リファラル採用)制度の活用
- オフライン:
- 大学や専門学校での説明会、キャリアセンターとの連携強化
- 合同企業説明会、就職・転職フェアへの出展(直接対話の機会)
これらの工夫により、年齢を明記せずとも、結果的に企業の魅力に共感した若手層からの応募を集めやすくなる可能性があります。
まとめ:法律遵守と効果的な採用の両立を
最後に、この記事のポイントをまとめます。
- 求人・採用における年齢制限は、改正雇用対策法により原則禁止されています。
- 禁止の背景には、少子高齢化や公平な機会の確保という社会的な要請があります。
- 定年、法令、キャリア形成、技能継承など、特定の理由がある場合は例外的に認められますが、求人票への理由の明記が必須です。
- 直接的な年齢指定だけでなく、「若手」「若い」といった間接的な表現も避け、違反リスクを理解しましょう。
- 若手を採用したい場合は、年齢ではなく「求める人物像」を明確にし、求人情報の書き方、働く環境、アピール媒体を工夫することが重要です。
最も重要なのは、年齢というフィルターで可能性を狭めるのではなく、企業が本当に求めているスキル、経験、価値観、ポテンシャルを明確にし、それを「求める人物像」として具体的に発信することです。
法律を正しく理解・遵守し、公平な採用活動を行うことは、企業の社会的責任であると同時に、多様な人材との出会いを増やし、組織の持続的な成長につながる道でもあります。適切な採用活動を通じて、貴社にマッチする素晴らしい人材との出会いが実現することを願っています。
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