2025.04.24
「例外事由3号のイ」と年齢制限求人を徹底解説:正しい理解と実務のポイント
求人募集で「年齢不問」としたいけれど、募集したいのは若手人材…。または、「この年齢制限、法的に大丈夫?」と不安を感じていませんか?
少子化や労働力不足が進む中、優秀な若手人材の確保は多くの企業にとって喫緊の課題です。しかし、安易な年齢制限は法令違反のリスクを高めるだけでなく、多様な可能性を持つ人材を見逃してしまうかもしれません。
この記事では、求人における年齢制限の原則と、例外的に認められる「例外事由3号のイ」を中心に、採用担当者が知っておくべき正しい知識と求人票作成のポイントを解説します。法的な不安を解消し、リスクを回避しながら、貴社が必要とする人材に出会うためのヒントをお伝えします。
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求人募集における年齢制限の基本:なぜ原則禁止なのか
求人での年齢制限は、公平な機会のために法律で原則禁止されています。改正雇用対策法により年齢のみの選考は問題とされ、違反リスクもあります。原則禁止を理解し、次章で解説する例外を知ることが重要です。
改正雇用対策法の要点
改正雇用対策法は募集・採用での年齢差別を禁止しています。年齢制限は「正当な理由」がある場合に限られますが、これは業務上の必要性など論理的な根拠が必要です。理解不足は違反リスクを高める可能性があります。
違反した場合のリスク
法令違反は行政指導や企業名の公表、求人停止につながります。求職者からの訴訟や損害賠償、社内外の信頼失墜リスクもあります。採用戦略にも関わる深刻な問題となり得ます。
「例外事由3号のイ」とは?若手採用のためのルール
求人募集の年齢制限は原則禁止ですが、例外的に認められるケースが6つあります。その中でも特に、若手人材の採用で多くの企業が活用を検討するのが「例外事由3号のイ」です。
この規定は、35歳未満の若年者を対象に、企業の組織を長期的に維持・発展させるためのキャリア形成を目的とした採用を可能にするものです。具体的には、新卒や第二新卒のような職務経験がない、または少ない方を、じっくり育成することを前提とした募集で多く用いられます。少子高齢化による労働力不足が進む中、将来を担う若手人材を確保したい企業にとって、非常に重要な例外事由と言えるでしょう。
例外事由3号のイを適用するためのポイント
例外事由3号のイを適法に適用するには、単に「若い人が欲しいから」という理由だけでは不十分です。採用する若年者が、長期勤続によって専門的な知識やスキルを計画的に習得し、企業もまた人材育成に積極的に投資するという双方にとって合理的な理由があることを示す必要があります。具体的には、「未経験者歓迎」「ゼロから育成します」といったスタンスを明確に打ち出すことが一般的です。企業側には、継続的な教育体制やキャリアアップの仕組みがあることが前提となります。
求人票で正当な根拠をどう示すか
求人票において例外事由3号のイに基づく年齢制限を示す際は、その正当な根拠を具体的に記載することが重要です。例えば、「長期的なキャリア形成のため、未経験者を育成する目的で35歳未満の方を募集します」のように、年齢制限の理由を採用の目的に紐づけて明確に伝えます。
さらに、貴社が若手人材に対してどのような育成を行うのか、具体的な教育研修制度、メンター制度、資格取得支援、キャリアパスの例などを詳細に記載することで、求職者は入社後のイメージを描きやすくなります。これにより、単なる年齢制限ではなく、企業として若手に投資し、共に成長していくカルチャーがあることをアピールでき、求職者の納得感と信頼感を得ることができます。これは、コンプライアンス遵守だけでなく、企業ブランディングの観点からも非常に有効な手段となります。
許容される年齢の上限について
例外事由3号のイにおいて、法的に厳密な年齢上限が定められているわけではありませんが、一般的には「35歳未満」とすることが多いです。これは、職務経験を問わない新卒・第二新卒採用において、正社員として長期的なキャリアを形成するための目安とされているためです。
ただし、貴社の事業内容や求められるキャリア形成の期間によっては、「30歳未満」や「25歳未満」と設定することも法的に可能です。しかし、その場合も同様に、なぜその年齢上限が必要なのか、その年齢から長期的な育成を始める具体的な理由や計画を合理的に説明できる必要があります。求職者に対して、企業がなぜその年齢層を求めているのか、納得のいくストーリーを提示することが、応募に繋げるためにも重要になります。
長期勤続とキャリア育成を求人票で伝える工夫
例外事由3号のイを活用する上で、求職者に対して「企業として長期的にあなたを育てていきたい」という姿勢を効果的に伝えることが非常に重要です。求職者は入社時の条件だけでなく、その企業でどのようなキャリアを築けるのかに関心があります。
求人票や採用サイトでは、抽象的な表現に留まらず、具体的なキャリアステップや育成プランを明示しましょう。「入社後3年間で担当業務のプロフェッショナルを目指し、5年目にはチームリーダーへ昇格」「〇〇研修で専門スキルを習得可能」「先輩社員がメンターとして成長をサポート」といった具体的なイメージを提示すると、求職者は自身の将来像を描きやすくなります。このような長期的な雇用と育成を前提とした制度があるからこそ、年齢制限が必要であるという論理が説得力を持ちます。
また、「35歳未満の方を対象とすることで、未経験からでもじっくりと専門スキルを身につけ、長期的に活躍できる環境を提供します」のように、年齢要件とキャリア育成を結びつけて伝えることも有効です。これにより、求職者は企業がなぜその年齢層を求めているのかを理解し、安心して応募を検討できるようになります。情報が不足していると、「ただ若い人が欲しいだけでは?」と企業への不信感を抱かせ、応募をためらわせてしまう可能性があるため注意が必要です。
年齢制限が認められる6つの例外事由
年齢制限が例外的に認められるのは、「例外事由3号のイ」のほかに5つ、合計6つ存在します。ここでは、それぞれの要件と注意点を確認します。
例外事由1号:定年年齢を上限とする募集の扱い
企業が定年制を設けている場合、定年年齢に達していない人材を募集するのはやむを得ない理由があるため、一定の範囲で年齢制限が設けられます。
例外事由2号:法令で年齢制限が定められている場合
例外事由2号は、そもそも法律で年齢制限が定められている職種や要件に適用されるものです。
例外事由3号のイ:長期勤続を通じたキャリア形成を目的とするケース
例外事由3号のイは、若年者を対象とし、長期的なキャリア形成を狙った採用を可能にする規定として知られています。
例外事由3号のロ:技能継承が必要な特定年齢層の募集
例外事由3号のロは、ものづくりや伝統工芸、職人技など、特定の技能を次世代へ継承する必要がある職種に適用されることがあります。
例外事由3号のハ:芸術・芸能等での年齢制限
例外事由3号のハは、芸術や芸能の領域で特定の年齢が求められるケースに対応するものです。
例外事由3号のニ:特定の年齢層を雇用促進する施策の場合
例外事由3号のニは、高齢者や若年者、障害者など特定の年齢層や属性の雇用を促進する公的施策と連動している場合に認められるケースです。
例外事由3号のイとロ・ハ・ニ:混同しやすい規定の違い
「例外事由3号」のイとロ・ハ・ニは混同されがちですが、各々の要件と適用範囲は異なります。それぞれの違いを分かりやすく説明します。
例外事由3号のイは若年者の長期雇用を目的とした規定であるのに対し、ロは技能継承、ハは芸術・芸能、ニは高齢者や若年者など特定年齢層の雇用促進施策と連動している点が異なります。いずれも年齢制限を設ける理由がはっきりと示せる場合にのみ適用されるので、「なんとなく例外事由3号に該当するはず」という曖昧な理解で運用するとリスクが高まります。
例えばロでは後継者育成や技術承継が焦点となるため、明確に伝統技術や特殊技能を習得させるという目的を求人で明示する必要があります。一方、ハはキャストの年齢設定が芸術・芸能の表現に不可欠である場合に限られるため、一般的な業種での「若々しい雰囲気を演出したい」という程度では適用が困難です。
ニについては公的施策と深く関わりがあるため、行政の助成制度や特定の地域振興策との連携が必要となります。こうした違いを把握しないまま混同すると、企業は本来の意図に合わない例外事由を選択してしまい、結果的に法的根拠が弱いと判断される恐れがあります。
求人票での年齢制限表記ガイド:具体的な書き方と注意点
法律を遵守しながら、求める人材像を明確化するために、求人票での年齢表記は慎重に行う必要があります。
求人票で年齢制限を示す際には、募集背景と根拠を明確に記載することが大切です。
トラブル回避のために求人票の内容を定期的に更新・見直しするプロセスを設けるのも有効です。法改正や裁判例の変化などに合わせて適切に修正しなければ、気づかないうちに違反リスクを抱えてしまうことになりかねません。部門横断での管理体制を作り、コンプライアンスを徹底しておきましょう。
「35歳以下」など年齢を限定する表現の扱い
例外事由3号のイを最も代表的に示す表記例として「35歳以下の方」と記載する方法があります。しかし、このように明確に数字を入れる場合は、その根拠が完備されていなければなりません。単に「若手が多い職場なので」という理由だけでは法的に弱く、労働局などから指摘を受けることがあります。
正当な理由としては、未経験者を前提とした研修や新卒と同等の処遇が用意されていることなどが挙げられます。人事側が「この年齢であれば、職歴の有無に関係なく一からキャリアをスタートしてもらえる」といった合理的な説明を準備しておくことは非常に重要です。
また「35歳以下」という年齢要件も絶対ではなく、採用計画や事業内容によっては「25歳以下」「30歳以下」と設定するケースもあります。その場合でも同様に、なぜその年齢上限が必要なのかを具体的に示して、利用する例外事由との整合性をとる必要があります。
トラブルを避けるための表現例とNGパターン
トラブルを避けるためには、「年齢不問」「若年層歓迎(長期勤務を想定しているため)」など、できるだけ包括的な表現を使う方法があります。例外事由を適用するにしても、募集要項の最終的なゴールはあくまでも優秀な人材を企業に迎えることです。そのため年齢制限をあえて書かずとも、企業の魅力や育成体制をしっかりアピールすれば、結果的に若手応募が増える場合もあります。
逆にNGパターンとしては「○歳~○歳まで」「体力勝負として若者優遇」といった直接的な年齢範囲の明示です。特に例外事由を示さないままこのような表現を使うと、求人メディア運営者から掲載拒否を受けたり、行政に通報されるリスクが高まります。
さらに、面接時の発言にも注意が必要です。書類上では年齢制限を示していなくても、口頭で「若い方が柔軟だから」などと言ってしまうと、差別的な選考とみなされる恐れがあります。採用担当者も社内研修を受けるなどして、法令遵守の意識を徹底することが不可欠です。
年齢制限を設けずに若手層を確保する方法
必ずしも年齢制限を設けなくても、魅力的な募集条件を提示すれば若年層は集まりやすくなります。
ここでは年齢制限せずに若年層を採用するための方法を解説します。
具体的な業務内容と必要スキルをアピールする
若手に限らず、求職者は「どんな仕事を任されるのか」を重視します。そのため、求人票には仕事内容を細かく記載するとともに、必要なスキルや即戦力として期待されるポイントを明示しておきましょう。若い人ほどキャリアビジョンが定まっていない場合もあるため、どのような道を歩めるのかをイメージしやすくすることが重要です。
また、未経験者や社会人経験の浅い人を対象にするなら、研修内容や先輩社員のフォロー体制など具体的なサポートプランも合わせて記載すると良いでしょう。これによって「経験がなくても、ここで学べば大丈夫」と安心感を与えられます。若手の応募率を高めるためには、入社後の具体的な成長イメージを伝えることが不可欠です。
さらに、業務上取得すべき資格や研修にかかる費用を会社がサポートする制度があるとなお良いでしょう。若手は金銭的な不安を抱えることが多いため、このような制度を用意している企業は魅力的に映ります。不安やリスクを軽減できる施策を示すことで、年齢制限を設けずとも採用ターゲットを集めやすくなります。
採用チャネルの最適化と求職者の不安を取り除く工夫
若手層を集めたいなら、彼らがよく利用する採用チャネルを活用する戦略も有効です。近年ではSNSや学生向け就職サイト、オンラインイベントなど多様なプラットフォームが存在します。こうしたチャネルを使いこなすことで、年齢制限をしなくても自然に若年層が集まる導線を作ることが可能です。
ただし、若手のほとんどが本当に求めているのは「長く働き続けられる環境かどうか」という安心感です。企業文化や勤務条件、福利厚生の充実度などを具体的に情報発信し、入社後の失敗リスクを減らす取り組みを見せることで、応募ハードルが下がりやすくなります。
例えば、社内の雰囲気や働く風景を動画で紹介したり、新人社員と上司の対談記事を公開するなど、オープンに情報を発信すると効果的です。年齢制限をかけなくても、ターゲットとなる若年層に「自分に合いそうだ」と思ってもらえれば、応募に繋がる可能性は大いに高まるでしょう。
「例外事由3号のイ」にまつわるQ&A
実務上でよく寄せられる質問をQ&A形式でまとめ、具体的なケースに応じた対応策を紹介します。
Q1:雇用対策法以外に注意が必要な関連法は?
雇用対策法は年齢差別を規制する中心的な法律ですが、労働基準法や労働契約法、さらに労働安全衛生法など関連する法律も多数存在します。例えば労働契約法では労働条件の明示義務などが定められており、募集段階で誤った情報を提示していると後でトラブルにつながる可能性があります。
また、育児・介護休業法により若年層が結婚・出産のタイミングで休業を取得する権利を持っている点も企業にとっては考慮材料です。年齢ではなくライフステージによる配慮が求められることもあるため、採用担当者は広範な法的知識を持つか、専門家に相談できる体制を整えておくと安心でしょう。
社会保険や年金関係なども含めて、適用年齢や制度が細かく定められているものが多いです。年齢制限の設定にあたっては、企業として何が義務となり、どこまでが任意なのかを明確化しなければ、思わぬ法的リスクを背負うことになりかねません。
Q2:若年層中心の職場で中高年採用を断る方法はある?
若手が多数を占める職場であっても、法令に反しない形で中高年採用を制限するのは極めて難しいのが現状です。もし「例外事由3号のイ」で年齢制限を設定するなら、求人票にはキャリア形成の趣旨をしっかりと書き込み、未経験待遇や研修プログラムの存在など具体的な根拠を示す必要があります。
その一方で、年齢制限を設けないまま応募を受け付け、面接の上で「仕事内容と希望者のスキル・経験が合わない」という通常の基準で不採用にする方法は可能です。この場合はあくまで年齢を理由としない選考基準を明確に言語化しておき、選考資料に残しておくことが大切です。
「若年層中心だから年齢が高い方は合わない」という表現は差別とみなされるリスクが高いので避けるべきです。企業としては、四半世紀先を見据えた組織構成や事業戦略も意識して、人材多様化の視点を持った採用活動を行う方が望ましいでしょう。
Q3:年齢制限を示すための書類や届出は必要?
企業が年齢制限を設けて求人票を公共職業安定所(ハローワーク)に提出する場合、例外事由に該当する理由を説明する書面の提出が求められることがあります。ハローワークでは法令に照らして違反がないか確認するため、必要があれば補足の資料を提出するよう指導されるケースもあります。
インターネット求人サイトなどでは、例外事由の記載を義務付けている場合もあれば、企業の自己申告制で済む場合もあります。ただし後者の場合でも、万が一通報やクレームがあれば、結局は行政のチェックを受けることになります。書類そのものが必要なくても、説明ができる状態にはしておきましょう。
実際に提出が必要な書類や届出の形式は、自治体によって異なることも多いです。事前に最寄りのハローワークや労働局に相談し、提出時期や必要な書類の最新情報を入手しておくと、スムーズに手続きが進められます。
まとめ・総括:適正な年齢制限運用で効果的な採用を目指そう
ここまでの知識を正しく活用して、職場のニーズに合った人材採用を行いましょう。法令遵守と丁寧な情報開示が、企業の信用と良好な労働環境を支えます。
年齢制限は原則禁止である一方、例外事由を適切に理解すれば企業にとって有効な手段となり得ます。特に例外事由3号のイを活用する場合、若年層へのキャリア形成支援の姿勢を明確に打ち出すことで、求職者からの理解と信頼を得やすくなります。
しかし、年齢制限をどう運用するかは企業のコンプライアンスだけでなく、採用戦略そのものにも大きく関わります。あえて年齢制限を設けず、魅力的な制度や働き方を提示すれば、より広い人材プールから求める人材を獲得できる可能性も高まるでしょう。
結局のところ、採用において重要なのは、法を守りながら企業のビジョンや期待する役割を正しく伝えることです。例外事由3号のイを含む各例外事由をきちんと把握し、場合によっては専門家や行政機関に相談しながら、トラブルなく効果的な採用活動を進めていきましょう。
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